20160420

アイヌネギ餃子

 
この季節はいつも少し寂しくなる。我が物顔で辺り一面を白く覆っていた雪は、日陰に薄汚れて、申し訳なさそうに残るのみで、たくさんの人の笑顔で賑わっていたゲレンデも、まばらにチラチラと人影が見えるのみ。そんな景色と、自分をタブらセ、気が滅入る。
 そういう時は、その気持ちに抗わず、寂しい気持ちを抱きしめて、家でウダウダするに限る。その日も11時まで寝て、ダラダラと温泉に向かった。
 温泉では友達に出会う。待ち合わせも連絡もしないで、ふと出会う。そして何となく話しをする。
「アイヌネギ取り行こうか」
 次の日山に入る。雪解けの冷たい水が流れる、切り立った沢の両側にはアイヌネギが、ニョキニョキと顔を出している。泥で滑る斜面を、木や笹に捕まりながら、無心になって、それを探し、摘んでは袋に入れる。小一時間で、山もりのアイヌネギがとれる。
「餃子にしょうか」
 仲間の家に集まり、アイヌネギの泥を洗い流し、刻み、ひき肉と混ぜ、世間話をしながら、一つ一つ餃子を包む。途中で我慢できなくて、ビールを空ける。また包む。焼く。食卓にはご飯とお箸が綺麗に並べてある。チームワーク。
「いただきます」
 心の奥のほうから、幸せがこみ上げてくる。美味しい物を食べる。春は春でいいもんだ、それはそれでいいもんだ。